学校までの道

 学校までの道のりを車で走っていると、急に視界が開ける瞬間が訪れる。
 市街地から走っていくと、車道の両側には、民家や農家が横目に過ぎていく。
しかし、そこからは何もない。以前は田んぼがあったのだろうか。真っ平らな土地が遠くまで広がる。風が強い日には、遠くの方に見える堤防に、時たま波が白く吹き上げる。
 田んぼにはまだ黒い土が残り、クシャっと折れたガードレールが道の脇に佇んでいる。工事中の道路では、車で走るたびに、砂埃が舞い上がると共に、身体 も大きく上下する。そんな道を通って、高台にある学校に着く。バスで通う子ども達は、この風景に何を思うのだろうか。ある先生は、通勤していてこの景色を 見る度に、胸が締め付けられると言う。最近、土地をならす工事が始まったようだ。手の入ったと分かる、人工的な真っ平らな土地が徐々に広がっていく。景色 が変わることは、過去の辛い想いを再起させなくて済む。そして、人は変化し得るという希望を僅かながらでも子どもに与えてくれるのではないか。
 そんな想いで、ゴーゴーと音を立てるブルドーザーを横目に見て、今日も学校に行く。
(大)